眼精疲労は、自律神経、脳の疲れが原因か?

 眼精疲労は、「目の疲労」なかでも目のレンズの厚さ(水晶体)を調節して蕉点距離を合わせる毛様体筋の疲労と考えられてきました。

しかし、最近では、自律神経が深く関わっているのではないかと考えられています。

 自律神経中枢は、パソコン作業などで近くを見るため、副交感神経の刺激を毛様体筋に送ります。

 しかし、その一方で、脳は自律神経を交感神経優位に維持しなければ緊張感を保てず高度な作業ができません。自律神経中枢は、脳を交感神経優位に維持しながら、目に対してだけは副交感神経の刺激を出し続けなければならない矛盾が眼精疲労の原因だと言われています。

 眼精疲労を伴う症状は、肩こり、頭痛、頭重感、全身倦怠、のぼせやふらつきなど自律神経失調症と似ています。

目に対しては、副交感神経の刺激を送りながら、脳を交感神経優位の緊張した状態に置くことで、目のレンズを調節する毛様帯筋へ送る副交感神経が痙攣する異常が見られます。

副交感神経の異常スパイクが眼精疲労の原因と考えられています。

東洋医学で眼精疲労を脳の疲れ、自律神経の伝達の異常と考えた場合、「目系」という概念があります。目には、12本の経絡、奇経又五臓とも密接に関係し複雑な構造で構成されています。

「目系」は、現代の解剖学で言う視神経の役割を持つもので、脳と眼球を連絡するものと考えられています。

「目系」を構成するものは、肝、心、腎になります。

 肝と心は直接目系に連絡しています。腎は、脊髄、脳、視神経の役割を持つものと言われています。

 心は、「心は目の使なり」とあるように正しい思惟活動があってはじめて目の機能が十分に発揮されると言われています。
 肝は、「目に開竅する」と言われるようにすべての目疾に関係しています。

 目とくに脈絡膜には、血管が非常に多く、肝の変化がよく目に現れます。

 腎は、「骨髄を主り脳に通じる」と言われています。物が見えるのは、瞳孔より光が入り、視神経から後頭葉まで正しく電気信号を伝達することによる腎の役割と言われています。

眼精疲労の原因は、様々であり、IT眼症、スマホ老眼など目を酷使して起こる疾患、ブルーライトなどの刺激による脳の疲労は、自律神経に深く影響されています。

鍼灸の施術では、目のまわりのツボ、目に関するツボが頭や足にもあり、そのツボの使い方で効果が変わってきます。
「目系」の構成する、心経、肝経、腎経のツボを組み合わせることにより、眼精疲労のみならず、

 自律神経や健忘、倦怠と言った脳の疲れによるものも治療できるものです。

長い休み、スマホやPCと言ったネット環境から離れることが一番必要なことかもしれません。

参考文献

隠れ疲労 休んでも取れないグッタリ感 根本修身著 朝日新聞出版
中医臨床 第32巻第4号 [特別連載]眼科疾患 東洋学術出版社
分冊 解剖学アトラスⅢ 株式会社 文光堂

2019年08月01日