大腸憩室の出血は、痛み止めが原因か?

「憩室出血の増加理由の一つに、高齢化のためにひざの痛みなどから非ステロイド性消炎鎮痛薬をのむ人の増加が挙げられています。この薬の副作用として胃や腸の粘膜障害が起きると知られています。」という記事を目にしました。(朝日新聞 「どうしました」 平成30年7月11日朝刊より)

 非ステロイド性消炎鎮痛薬の見解について、書かれた本があります。

「非ステロイド性消炎鎮痛薬は、NSAIDsと呼ばれる痛み止めの薬です。痛みを引き起こす物質をつくりだすシクロオキシナーゼという酵素を押さえ込むことで、炎症の最終段階をブロックし、痛みを和らげるものと言われています。急性の痛みにだけ該当するものであって、組織障害が起こってから1ヶ月も過ぎると、発痛物質はすでに消えています。それにもかかわらず、痛みが続く時は、心理的な物を含めた、もっと複雑なシステムが働いていると推測されます。」(『西洋医学が解明した「痛み」が治せる漢方 井斎偉矢著 集英社新書』より引用)

 ここで言う複雑なシステムとは、東洋医学的な痛みのメカニズムのことと言えます。東洋医学では、痛みの原因を外因、内因、不内外因と分けています。

外因は、六淫と呼ばれる、風邪、寒邪、火邪、暑邪、湿邪、燥邪の六種の病邪からなります。 

内因は、七情と呼ばれる、喜、怒、憂、思、悲、恐、驚の精神因子からなります。 

不内外因は、飲食不節、労倦、外傷などからなります。

外因、内因、不内外因などの発病因子が人体において気血運行障害を引き起こし、疾病が発生すると考えています。

鍼灸の治療は、気血の滞りを改善する目的で、ツボを刺激していくことで、痛みを緩和させるものと考えています。

又、漢方薬の場合は、その処方がツボにあたります。

 さらに『西洋医学が解明した「痛み」が治せる漢方 井斎偉矢著 集英社新書』では、「整形外科では、NSAIDsが効かなかったり痛みが慢性化したりするとトラムセットやリリカのような強い鎮痛薬にシフトする傾向があります。しかし、結局そのような強い薬を服用しても、副作用ばかり増えて、慢性的な痛みは解決しません。整形外科の先生も、行き詰まりを感じているケースが多いと思います。」と言っています。

 患者さんの多くは、今自分に起こっている痛みに対し、簡単に早く治まる方法を見つけようとします。

 仮にその方法で痛みが治まったとしても副作用を伴うものなのかどうかよく吟味しなければ、思わぬ副作用に苦しむ可能性があると考えるべきではないかと思います。

 そこには、経済的な問題があるのかもしれませんが、時間をかけて、診断、施術する重要性は、最終的に患者さんの利益になるものと思います。

2019年07月13日