コロナ後遺症について「LONG COVID」

1.コロナ後遺症について「LONG COVID」

(朝日新聞 2023年2月1日 医療 コロナ後遺症待たれる解明より引用)

新型コロナにかかりほかの人にうつす可能性がなくなってからも症状が2か月以上続き、ほかの病気として説明がつかないものとしています。(世界保健機関 WHO)
海外では「LONG COVID」などと称されています。日本では「罹患後症状」と呼んでいます。

厚生労働省「診断の手引き」で、後遺症の代表的な症状として、疲労感、倦怠感、関節痛、筋肉痛、せき、たん、息切れ、胸の痛み、脱毛、記憶障害、集中力低下、嗅覚、味覚障害などあげられています。

おおよそ感染者の10%くらいと考えられており、日本では累積感染者は厚生労働省によると令和5年1月30日時点で約3,250万人、おおよそ300万人が後遺症を経験している可能性があると言われています。

コロナで入院を必要した人は、そうでない人の3.45倍、また男性より女性が多いと言われています。コロナ後遺症は軽症だった人でもみられ、「長引く疲労感とコロナの重症度の関連はない」とも言われています。

後遺症の原因は、確定していないが有力な候補としてあがっているのはウィルスまたはその破片が体のどこかに残っていて、体に悪さをしている。又、感染によって免疫機能に異常が起き、体を守るはずの免疫が自己を攻撃しているなどの説であると言われています。
感染のせいで血管が障害を受け、細かい血栓ができ、神経細胞などの機能が妨げられているといった可能性があるなど複数の要因がからみあっているという見方が有力だと言われています。

後遺症を防ぐには、事前にワクチンをうっておくことで、リスクを減らせるという研究が多い。発症後のワクチン接種で、リスクが41%低くなったとの研究もあります。接種によって体内にとどまるウィルスやその断片を追い出すのに役立ったり、免疫の状態を整えるのにつながったりしているのかもしれないと推測されています。

今のところ「こうすれば確実に治る」というような治療法は確立してはいない。厚生労働省では「かかりつけ医らが対処療法などをして、必要に応じて専門医に紹介する」などとしています。

2020年7月にJAMA誌に発表された、イタリア・ローマのジェメッリ大学病院の調査結果によると倦怠感(53.1%)、呼吸困難(43.4%)、関節痛(27.3%)、胸痛(21.7%)を訴える人の割合が高かったとしています。
この論文で最も割合の多かった症状は倦怠感(53.1%)でした。実は、COVID-19と関連して、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS, Myalgic Encerphalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome)の発症増加の可能性も危惧されています(MEとCOVID-19の関連性についてはNPO法人筋痛性脳脊髄炎の会のサイト「COVIDとME」を参考にさせていただきました3)。

*公益財団法人 東京都医学総合研究所新型コロナウイルス感染症の後遺症について | 新型コロナ関連情報 |
https://www.igakuken.or.jp/r-info/covid-19-info12.html

2.PEM(post-exertional malaise、労作後の倦怠感)とは、

新型コロナに感染後、回復した人の中には、「体がだるくてつらい(倦怠感が強い)」「以前より体力が落ち、すぐに疲れる」「体が鉛のように重く、感じられる」と訴える人が多くいます。
このように回復後の数時間から数日後に強い倦怠感などの現れる後遺症をPEM(post-exertional malaise、労作後の倦怠感)といいます。
PEMが現れると、我慢して体を動かしたあと、数日~数か月間も寝たきりになる「クラッシュ」起しやすくなります。
新型コロナウィルスに感染すると、体の生体反応が過剰となり、脳での炎症を起こすことがあります。その結果強い倦怠感や疲労感などが起こります。

3.東洋医学による倦怠とは、

倦とは疲労、労倦のことであり、怠とは怠惰のことである。すなわち倦怠とは疲れて動きたくなくなる自覚症状のことを言います。
全身の無力感、局所のだるさ、両足の無力感、恍惚、思考力低下、立つとふらふらする、手足のふるえなど、いろいろな現れ方があります。
多くは、気虚、脾虚、腎虚、湿因、五労、七情などに分類されます。

病因病機
病後や産後で気血が回復していないもの、*五労七情により精気を損傷しているもの、房事過多により元気が消耗しているもの、飲食不節により脾胃虚弱になり淡湿が内盛しているもの、心労により神気を損傷しているものは、倦怠がおこります。
*五労七情とは、
五労 久視傷血 目を使いすぎると血を傷める 影響がある臓器 心
   久臥傷気 横になりすぎると気を傷める 影響がある臓器 肺
   久坐傷肉 座ってばかりいると肌肉を傷める 影響がある臓器 脾
   久行傷筋 動いてばかりいると筋肉を傷める 影響がある臓器 肝
   久立傷骨 立ってばかりいると骨を傷める 影響がある臓器 腎
七情 精神的な原因(怒、喜、思、悲、憂、恐、驚)

証としての分類
脾気虚
主症 倦怠、特に四肢無力、食後のだるさ
随伴症状 食欲不振、おなかが張る、大便溏薄(固形物のある便)、自汗(動かなくても出る汗)、息切れ
原因 
脾は、運化を主り、四肢と肌肉を主っている、脾気虚のため運化機能が低下して、気血の生成がうまく栄養できないためにおこります。

淡湿による倦怠
主症 倦怠、乏力、動くと息切れがする
随伴症状 肥満、下肢の浮腫、寒がり
原因
淡湿内盛によって脾陽が抑止され、陽気不振になると起こる。湿には重濁性があるためと言われています。

元気不足による倦怠
主症 倦怠、嗜臥(眠気がある)、児童では発育不良、中年では早老、または久病後の精神疲労、腰膝のだるさ、無力感
随伴症状 記憶力減退、知力減退、眼精疲労、盗汗(寝汗)
原因
倦怠、嗜臥(眠気がある)腰膝のだるさ、無力感 
*元気は腎と関係しており、身体の原動力であり、成長・発育を主っている。元気不足になると推動機能が低下して、これらの症状が起こります。
記憶力減退、知力減退、眼精疲労
元気不足のために脳髄が充足しないとおこる。
*元気とは、生命活動の原動力と言われる。元気が充実しておれば生命力は旺盛で体質は強健であり、疾病を生じることは少ない

*形神不振による倦怠
主症 情緒不安定または抑鬱、精神疲労、無気力、情緒変化による突然の脱力感
随伴症状 不眠、多夢、考えすぎ、疑い深くなる、胸脇部の脹痛
原因
情緒不安定または抑鬱、精神不安定、無気力など 
形と神の協調と統一は、生理活動を維持する基礎である。神志不安定となり、志意が散乱すると形体も疲弊し無気力となります。
不眠、多夢 
考えや気分が煩雑になると、神の拠り所がなくなりおこります。
考えすぎ、疑い深くなる、胸脇苦満 
肝気鬱結により胆の決断を主る機能が悪くなるとおこります。

*形神 形は肉体、神は精神と言われ、肉体と精神は常に同じである。

配穴 関元、気海、足三里、照海、三陰交、膏肓、中脘、建里

参考文献
鍼灸学 臨床篇 天津中医学院+学校法人後藤学園著 東洋学術出版社
新型コロナ後遺症 完全対策マニュアル 平畑光一著 株式会社宝島社
朝日新聞 2023年2月1日 医療 コロナ後遺症待たれる解明
公益財団法人 東京都医学総合研究所新型コロナウイルス感染症の後遺症について | 新型コロナ関連情報 |
https://www.igakuken.or.jp/r-info/covid-19-info12.html