中医学では、古くは「窓籠」と呼ばれた耳は聴覚器官で、平衡機能を兼ね備えていると考えられています。この器官は臓腑と密接な関係があり、また十二経脈と連絡して、五音を聞き分けるとともに、空間における人体の平衡感覚を維持するとしています。
次のように分類しています。
外感の風邪
風邪が耳竅を犯すと耳竅が閉塞され、耳閉感、耳鳴り、重聴(軽度の難聴)、重症では、突発的な難聴といった症状が生じる。
急性非化膿性中耳炎、聴神経炎、前庭神経炎
気滞血瘀
感情が鬱屈して、肝気が鬱結して気滞血瘀が引き起こされる。あるいは、大音量を聞いたり、外傷を受けることによって瘀血が生じる。あるいはまた気圧の急激な変化や薬物の害毒などは、いずれも耳部の経脈の流れを阻害する。
内頚動脈の痙攣、血栓、耳管の急性閉塞、外耳性耳聾、ヒステリー性耳聾、薬物性耳聾
水湿
肺脾気虚によって水湿不化が生じ、水湿が内耳に停滞すると、耳鳴り、回転性のめまい、悪心、嘔吐などが生じる。
メニエール病
肝腎不足
肝腎の不足や気血両虚は、慢性の耳鳴り、難聴、めまいなどを引き起こす。
耳硬化症、老人性難聴、騒音性難聴、薬物中毒性難聴
耳のまわりには、数多くのツボがあります。
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耳のまわりのツボに刺せばいいというものではありません。
病因病機を考えてツボを選んで治療します。
病因は、外因、内因、不内外因に分けられます。
外因は、六淫と呼ばれる六種の病邪からなります。
風邪、寒邪、火邪、暑邪、湿邪、燥邪
内因は、七情と呼ばれる、精神因子からなります。
喜、怒、憂、思、悲、恐、驚
不内外因は、飲食不節、労倦、外傷などからなります。
そして、主訴と経絡の流注を考えて治療します。
耳に関連する経絡は、以下のように複雑に関連しています。
経脈
足の太陽膀胱経
足の陽明胃経
足の少陽胆経
手の太陽小腸経
手の少陽三焦経
経別
手の厥陰心包経
経筋
足の少陽経筋
足の陽明経筋
手の太陽経筋
絡脉
手の陽明経の別絡
参考文献
中国鍼灸学の治法と処方
邱茂良・孔昭遐・邱仙霊 編著
浅川要・加藤恒夫 訳
発行所 東洋学術出版社
健康で美しくなる美容鍼灸
著者 北川 毅
発行所 BABジャパン
経絡学 図説
発行 上海科学技術出版社